春が来ると農作業が本格化する。
ジャガイモの植え付けや稲作のための準備がある。
昔であれば、苗代に使うため、秋の刈り入れ後、籾殻をいぶし、燻たんにしておくところから、既に次年度に向けた稲作準備が進められていたのだが、近年は、機械化が進み、苗代作りは行われなくなり、秋の風物詩とも言えた燻たん作りが見えなくなり、籾殻を風呂の残り湯につけ芽だしをしたりすることもなくなって、箱苗づくりが機械によって行われるようになった。
前置きが長くなったが、そういった稲作の準備であるが、私の住むところでは、毎年4月の第一日曜日に「いほり」が行われる。
「いほり」とは、田んぼの用排水路の泥上げのことである。集落で田んぼを有する家の人が朝8時頃に集まり、各集落毎の持ち場となるエリアの水路の泥を上げ、水の流れをよくするための重要な作業であった。
しかし、今ではパイプ給水となったため、要は、排水路のみの泥上げですむようになったのである。
子供の頃には、よく大人の人達が泥上げ作業をしている側をくっついて歩き、時には、ドジョウやなまずなどが見つけられるとバケツに入れたりして遊んでいたものである。
ゲーム機などもなかった昔は、そういったことが子供の遊びであったのかもしれない。
その遊びの中で、集落の習慣や作業の仕方などを自然と身につけていったのではなかろうか。
今年は4月6日が日曜日である。「いほり」があるとの電話が、しばらくするとかかってくるのだろう。